不動産コラム

使用貸借って何?

六法全書

日差しがキツくなってきましたね。スーツとネクタイが厳しい季節です。個人的には明日からクールビズと決めました。

さて、競売の現況調査報告書などで見かける言葉で「使用貸借」という言葉が有ります。今日はその話です。

使用貸借とは?

簡単に書くと、無償で貸し付ける契約が「使用貸借契約」と呼ばれます。一方、有償で貸し付ける契約は「賃貸借契約」です。「賃料」があるかどうかがポイントです。

よくある例では、ご家族間などで、お父様の名義の土地にお子様の名義で家を建てる場合、特に地代などは払わずに無償でその土地を使ったりしますよね。これが使用貸借です。別の例では、アパートの大家さんが所有のアパートの一室を、ご親戚の方に無償で貸したりとかもあるかと思います。これも賃料とかが無いので使用貸借です。

実際の事例としては貸す方と借りる方になんらかの関係(親子、親戚、友人、雇用関係など)が有る場合がほとんどです。大抵の場合は不動産屋の仲介も入っていませんので、契約書とか面倒なものは有りません。いわゆる口約束ですね。

土地

使用貸借の権利

不動産の場合は、普通の「賃貸借契約」の場合、借地借家法が適用されますので、賃借人の権利はとても強いものとなっています。賃貸人に正当事由が無ければ契約を解除できませんし、ご存知のようにその正当事由もなかなか認められません。

一方「使用貸借契約」の場合は、借地借家法は適用されないため、貸主は原則としていつでも借主に対して契約を解除し、退去を要求することができます。

まあ常識的にも、タダで貸してもらっているので、借りている方も強いことは言えませんよね。そういうことです。

猫パンチ

使用貸借と競売での占有者の問題

競売物件の場合は、物件における占有者が問題になりますが、賃貸借」の場合は借主は保護されます。抵当権設定の前から賃貸借契約を結んでいた場合はその契約はそのまま引き継がれ、賃貸人に正当事由が無ければ契約を解除できません。そして、抵当権設定の後に賃貸借契約を結んだ場合でも、退去まで6ヶ月間の猶予が認められます。

これが、使用貸借」の権利で占有していた場合は、買受人(落札者)に対して主張できる権利は有りません。引渡命令の対象となります。

賃貸借契約書

使用貸借と相続の話

税務上の相続財産評価では、「使用貸借」による土地を貸借する権利の価値の評価は0円です。

土地を他人に貸している場合、相続税の評価では一定の減額をされますが、「使用貸借」の場合は更地扱いになり、借地権を考慮した評価の減額はありません。さらに「使用貸借」の場合は、建物が貸家であっても更地評価になります。いわゆる貸家建付地にはならないです。

それから上記の例で、お父様の名義の土地にお子様の家を建てた場合、借地権という財産を贈与されたという事が言えます。すると贈与税の問題が出てくるはずなのですが使用貸借」は上述のように「賃貸借」と比べて弱い権利ですので、この借地権?は価値が無いじゃん!ということで贈与税は発生しません。ところが、もし地代を支払ってしまうと、通常の「賃貸借契約」が締結されているとみられ、その時点で贈与税課税される可能性が出てきます。

なお、「使用貸借」の場合は、贈与税は無くても、相続時に相続税の方でしっかり課税されますのでご安心下さい……

いずれにしても、土地の貸借が「賃貸借」か「使用貸借」かによって課税関係が変わりますので注意です。ある程度の不動産を所有されている方は、何か行動を起こす前には必ず税理士先生に相談するようにした方が良いかと。

 

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