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急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域などの違い

崖地の工事

ここのところ昼間は陽気が気持ち良いです。外へ出るのがあまり苦になりません。


さて、横浜から三浦半島にかけてはその地形上しょうがないのですが、山と坂道そして崖がたっぷりです。そして現在手がけている逗子の物件も建物の裏側がすぐ崖で色々と気になる所です。

傾斜地はがけ崩れ・地すべり・土石流などの危険が有るということで、急傾斜地の近隣のエリアではいくつかの法律上の制限が有ります。

一般的な建築の制限などは建築基準法という法律で定められているのですが、急傾斜地の近くではさらに他の法律や自治体などの独自の条例などが有って、これが結構分かりにくいです。

逗子の山と海

順番にその内容を見てみましょう。


がけ条例

まずかげ条例です。これは各都道府県や政令指定都市、自治体によってそれぞれ定められている条例で各地域で微妙に内容が異なります。なお「がけ条例」という呼び方は通称です。

横浜市中区のがけ

この条例では一般的には「2mまたは3mを超える高低差があり、30度を超える傾斜をなす土地」を”がけ”として規制の対象にしており、きちんとした擁壁などが設置されてない場合は、かげの上下ともにがけの近くには建物を建てられないことになっています。その他例外はいくつか規定されていますが。

神奈川県建築基準条例
逗子市は神奈川県建築基準条例が適用されて3m以上の高さの崖に適用されます。
横浜市建築基準条例
横浜市建築基準条例も高さ3mです。
東京都建築安全条例
東京都建築安全条例では高さ2mですね。

急傾斜地崩壊危険区域

急傾斜地崩壊危険区域とは、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」、いわゆる急傾斜地法という法律において定められているのですが、がけ崩れにより相当数の居住者等に危害が生ずるおそれがある急傾斜地と、がけ崩れが助長・誘発されないようにするため、切土、盛土など一定の行為を制限する必要がある土地で、都道府県知事が指定した区域となっています。

急傾斜地崩壊危険区域

さて、急傾斜地崩壊危険区域の指定基準ですが、これも急傾斜地法等により定められています。具体には、次の全てに該当する急傾斜地を、急傾斜地崩壊危険区域として指定することができます。

  • 傾斜度が30度以上あるもの
  • 高さが5m以上あるもの
  • がけ崩れにより、危害が生じるおそれのある家が5戸以上あるもの、又は5戸未満であっても、官公署、学校、病院等に危害が生ずるおそれのあるもの

で、この急傾斜地法による制限ですが、「急傾斜地崩壊危険区域内で行う、切土、盛土、立竹木の伐採、工作物の設置等、法で定められている制限行為を行う場合は、都道府県知事の許可が必要」とありますが、建築物に対しての直接の規制はこの法律には無い様です。

ただし、これも条例などで規定されるのですが、急傾斜地崩壊危険区域は「災害危険区域」とされることが多く、そうなると結局建物の構造などに制限がかかります。

横須賀市建築基準条例
横須賀市建築基準条例

土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域

土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)および土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)は土砂災害防止法という法律に基づいて指定されています。

土砂災害防止法とは、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の略称で、土砂災害(がけ崩れ、土石流、地滑り)から国民の生命を守るため、土砂災害のおそれがある区域等を明らかにし、危険の周知、警戒避難体勢の整備、住宅等の新規立地の抑制、既存住宅の移転促進等のソフト対策を推進するもので、平成13年4月に施行されています。広島県で大規模な土砂災害が発生した後ですね。

具体的にはこんな場所が区域指定の対象になります。

土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)
土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域。

土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)
土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域

土砂災害警戒区域に指定されただけでは建築の制限は無いのですが、土砂災害特別警戒区域に指定されると、開発行為の規制や土砂災害が発生したときにでも生命または身体に危害が生じないようにするための建築制限が規定されます。具体的には建物の外壁等の部分を鉄筋コンクリート造等にするなどです。

土砂災害特別警戒区域等について
土砂災害特別警戒区域等について(神奈川県のHPより)

上記のように崖に対する規制はいくつかあるわけですが、まず「がけ条例」はがけの高さと角度、場合によっては土質などで自然と「がけ」の定義が決まり、条例による建築の制限がかかります。たぶん崖と一言で言っても地域の特性があるので具体的な内容は各地域の条例で決めるということなのだと思います。

で、「急傾斜地崩壊危険区域」と「土砂災害警戒区域土砂災害特別警戒区域」の違いが分かりにくいのですが、「急傾斜地崩壊危険区域」というのは基本的にはそのエリアの方が自分たちで指定して下さいと申請するものらしいです。そうすると擁壁の工事などを自治体がやってくれるということみたいです。

このような決め方だと、本当に危ないところでも指定漏れが出てきますので、土砂災害防止法というのが作られて、こちらは頼まれなくても積極的に各自治体が調査して、危険な箇所は強制的に「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」として指定する感じです。

また、それぞれの法律や条例による建築物に対する規制は、複合して適用されたりします。そして実際の許可基準は各自治体の運用によることが多々あります。

急傾斜地崩壊危険区域

検討されている土地の近くに急傾斜やがけがある場合は、事前に建設会社・建築士と役所などに十分に相談することが大事です。

坂道がきついとか他にも傾斜地は色々デメリットはありますが、斜面の上からの眺望はすごく良いことが有ります。すかっと抜けている眺望は気分も明るくなります。

横浜市の斜面
横浜市傾斜地
黄色の看板に「車はバックでは登れません」と書いてありました。

なかなか価格も含めて100点満点の物件は見つからないので、何を優先するか決めておくと良いですね。


よくお客様には言うのですが、建物や軽微な怪我などは保険である程度リスクをカバーすることができますが、身体に直接の影響、大怪我や死亡などのリスクがある場合はいくら保険金が入ってきても取り返しが付かないことになりかねません。

がけの近くで危険箇所だと判明している場合は、万一の土砂崩れなどの際にも潰れないようになるべく強固な建物や基礎を検討しましょう。なお、しっかりした擁壁を築造するのが一番安心ですがすごくコストがかかります。

コンクリート擁壁

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